2014年6月24日火曜日

《四大》とプラトン立体

■五つの正多面体


日本ではあまり馴染みのない呼び方ですが、正四面体、正六面体(立方体)、正八面体、正十二面体、正二十面体の五つの正多面体をプラトン立体と呼ぶことがあります。その理由は、プラトンの『ティマイオス』という本にこれらの立体が地水火風との関係で紹介されているからです。

■『ティマイオス』


『ティマイオス』は日本ではあまりお目にかかりません。同じプラトンの著作でも『饗宴』や『ソクラテスの弁明』などは、文庫本も数種類出版され、比較的入手しやすい状況ですが、『ティマイオス』は岩波書店のプラトン全集の中に収録されたものしか私は知りません。その翻訳の日本語もかなり読みにくいものでしかありませんので、内容をきちんと把握するのは、かなり困難です。
ところが、ヨーロッパの文化的伝統では、非常に重視された著作だったようです。その一番の証拠が、ラファエロの筆になるヴァチカンの『アテネの学堂』の絵です。この作品の中央には、左にプラトン、右にアリストテレスが配され、それぞれ特徴的なしぐさをしています。「イデア論」を説いたプラトンは右手人差し指を上に向け、「中庸の徳」を語ったアリストテレスは右手のひらを下に向け、前方に差し出しています。
800px-Sanzio_01_Plato_Aristotle
この二人は左手にそれぞれ本を持っていて、両者とも書名を読み取れます。プラトンは『TIMEO』アリストテレスは『ETIC』という文字が読み取れます。これはそれぞれ、『ティマイオス』と『エチカ(倫理学)』を現しています。
Raffael_book
この二人の人物に沿って、人間を二つのタイプに分ける場合もあります。プラトニカーとアリストテリカーです。アリストテレスは『自然学』『政治学』なども著していて、地上の世界にも深い関心を持ち、そこに分け入っていきます。一方、プラトンの関心は、もっぱらイデア界、つまり理念的世界に向いています。この両方の質が的確に結びつくとき、人類の認識は一気に高みにのぼります。それは、一個人の内面で起きることもありますし、二人の人間の出会いによって生じることもあります。
その後者の典型とも言えるのが、天文学者のティコ・ブラーエと数学者ケプラーの出会いです。ケプラーは惑星に関する法則を発見し、天文学で有名ですが、彼自身は近眼で、星をまともに見ることはできなかったそうです。生まれはシュツットガルト近郊の貧しい家でしたが、幾何学、数学の才能に恵まれ、その方面での論文も残していますし、音楽の調律に関する論文も書いています。
一方のティコ・ブラーエはデンマークの貴族の生まれで、国王の援助を受け、ヴェン島に天文台をつくり、当時の最新鋭の機材を駆使して、肉眼観測としては最高精度の天体データを収集しました。友人から聞いた話では、彼の城には地下牢が作られていたそうです。なぜなら、天体観測にかかる費用を捻出するために、島民に重税を課し、しばしば一揆が勃発したからだと言います。実際、1599年には一切のデータと観測機器を持って逃げだし、ウィーンのルドルフⅡ世に庇護を求めました。後にティコと出会ったケプラーが「彼は、私の何年分もの収入に相当する機材をいくつも持っている」とぼやいたそうです。
ティコの綿密なデータとケプラーの素晴らしい計算力、つまりアリストテリカーとプラトニカーの才能が出会って、はじめて惑星に関する運動力学的法則が明らかになったのです。
このように、プラトニカーもアリストテリカーもそれぞれ違った分野に才能を持っています。しかし、事、地上的な成功という意味では、アリストテリカーの方が優位なようですし、ラファエロもそれを巧みに描き分けています。

足下

■五つのプラトン立体の中の四つと《四大》


さて、ティマイオスの中で、立方体は最も安定しているので、《地》に振り分けられます。
hexa
最も軽く、また鋭くどこにでも入り込んで行くものとして、正四面体が《火》に割り当てられます。
tetra
次に鋭いもの、つまり正八面体が《風》に、そして残りの二十面体が《水》に割り当てられます。
octa
icosa
そして、正十二面体については、その存在も語られていません。
意味がわかりにくい気はしますが、岩波書店のプラトン全集からの抜粋を入れておきます。

文書名 _[プラトン]ティマイオス _ページ_1
文書名 _[プラトン]ティマイオス _ページ_2
文書名 _[プラトン]ティマイオス _ページ_3

■正十二面体はエーテルに対応


ピタゴラス学派内では、正十二面体は知られていましたが、その存在を外部に漏らすことは禁じられていたと言います。そして、彼らはそれをエーテルに対応させていたといいます。
dodeca
ギリシャ時代に言われていた「エーテル」が何を意味するかは推測の域を出ませんが、シュタイナーはこのエーテル領域をさらに詳しく述べていると言えるでしょう。つまり、
  • 熱エーテル
  • 光エーテル
  • 化学エーテル(響きエーテル)
  • 生命エーテル
の四つです。この詳細についてはまた別な機会に譲ることにしますが、とりあえずシュタイナーの発見(あるいは報告)によってこのように細分化されていることだけをご紹介しておきます。
四大と四エーテルを総合した秩序は、
生命エーテル
化学エーテル
光エーテル
熱エーテル
《火》
《風》
《水》
《地》
あるいは視点を変えて、
《火》  熱エーテル
《風》      光エーテル
《水》         化学エーテル
《地》             生命エーテル
になります。 

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