2014年8月15日金曜日

アントロポゾフィー絵画が目指す《色彩からの造形》

■本質に回帰する

シュタイナーの芸術論の核心は本質に立ち返るという点にあります。 その意味で、絵画の一番の課題は色彩に立ち返ることです。それゆえ、シュタイナーは「色彩から描く」ということを随所で強調しています。そうした中から、「学習的スケッチ集」と呼ばれる簡単な絵が生まれました。
低学年はなぜぬらし絵?』の記事もご覧になってください。

■「学習的スケッチ集」

ルドルフ・シュタイナーは絵画において色彩から形が作られていくと語っていました。そこであるとき、ゲーテアヌムで描いていた女流画家のHenny Geckがシュタイナーに「そのプロセスをわかりやすく示すモチーフを描いて欲もらえませんか」と頼みました。

こうして、1921年にいわゆる学習的スケッチ集が誕生しました。シュタイナーは約30点の一連のスケッチを描きましたが、始めは単純な自然界のモチーフです。もちろん、モチーフが色彩から生じて来る様子がはっきりとわかります。これと同時期にシュタイナーは画家のための色彩論の講義を4回行っています。そこでも、色彩ダイナミクスの違いから色彩の質を感じ取ることを出発点にしています。




上の絵の上が「日の出」、下が「日の入り」です。もちろん、PC上の画像では色彩のニュアンスは壊れていますから、この色調からフォルムが生み出される様子を感じ取ることは難しいですが、参考までに紹介しておきます。

このように見ますと、「学習的スケッチ集」を追体験することは、シュタイナー学校教師にとって非常に有益でしょう。こうした練習を通して、色彩に対する感覚がより目覚めるからです。この練習は楽器の練習と比べるならチューニングの練習とも言えるでしょう。

チューニングもできない先生から楽器を習おうという人はいるでしょうか? しかしながら、色におけるチューニングができる人はまだ多くはありません。その意味では、皆が途上にいます。ですから、シュタイナー教育で絵画を教えようとする者は、少なくとも「よりよくチューニングできるように」努力する必要があるのではないでしょうか。

こうした画法を系統的に身につけられるのは、ドルナッハのワーグナー絵画学校と言われています。

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