2014年8月2日土曜日

ウシは消化・代謝系がドミナント

■外に向かった活動


  • 木や柵に身体をこすりつける
  • 仲間をなめる
  • 牡牛同士は極希に闘うこともある
  • 全般にゆったりしている

つまり、外界への働きかけ、相互コミュニケーションなどは乏しい。

■身体外観の特徴を馬と比較



ウシでは

  • 胴部:大きく、そこに多くが集中している
  • 頭部:せいぜい水平程度までしか上げられない
  • 脚 :比較的短く、幹のようで、重たい身体を《支え》ている。また、先が二つに分かれた蹄も《支える》機能を果たしている。大きく曲がった関節には《荷重》を受けている様子が現われている。

■動き

すばやくエレガントな動きは難しい。

■内臓の特徴

内部(内臓)での活動、特に消化活動は活発である。大きな胴体には、主に消化器が詰まっている。

▲食道&胃
食道に相当する、こぶ胃(150l)、網胃、葉胃、の3つの胃と、本来の胃である しわ胃の4つの胃がある。前の2つは「ルーメン」と言われ、また、容量は全体で約200lである。
葉胃(3)には、細かいひだがあり、大量の水分を再吸収する。しわ胃(4)では再び別な消化液が1日に100l 分泌される。
新生時
こぶ胃 < 1/2・しわ胃
3ヶ月
こぶ胃 > 2・しわ胃
▲腸
腸の長さは50m以上あり、発達している。大腸は平べったい螺旋状で、1.5~2回ねじれている。羊ややぎの3、4回に比べると、少なく、糞はどろどろで、《解消的、溶解的》傾向(固め形作る形態形成の逆)が現れている。

■頭部と唾液腺


図からもわかるように、唾液腺の方が脳より大きく、1日に100l以上を分泌する。
1日あたりの唾液の量
110l、干し草では180l
40l
6~16l
1~2l
牛では、解剖学的に見ても、胃を中心とする消化器官がメインになっている。いわば、消化器官が牛の本性を理解していくための鍵になるので、それを中心に他の部分も見ていく。

■胃と感情

胃と感情はどのように結びついているだろうか。胃が空だと、そこからは空腹感が湧きあがってくるし、十分に満たされれば、満腹感を覚える。牛の内面の営みを考えると、ほとんどそれだけと言ってもよいくらいである。

■その他の特徴

多くの動物では口の中だけが湿っているが、牛は口の外側まで湿っている。
草を食べるときも、歯や唇で草をちぎるのではない。舌を草に巻き付け、それで引っ張り込んでいる。この時に、味わってもいる。

■ウシの一日

早朝から2.5時間から3時間かけて草を食べる。
30分から1時間の休憩の後、多くの場合横たわって反芻を始める。胃に入れた草を少しずつ口に戻して、リズミカルに49、50、51回くらい噛み、再び飲み込む。この時には、多くの唾液が分泌される。したがって、口腔は第5の胃とも言える。

1日8~10時間、量としては、小型種で50kg、大型種で80kgの草を食べ、反芻にもほぼ同じくらいの時間をかけている。それと同時に、当然腸も活動している。
物質の変容に専心している。

■感覚

視覚、聴覚よりも、味覚、嗅覚の方が重要である。

■対極的なプロセス

分解・解消プロセスと形態形成プロセスは対極的である。その視点で見ると、消化は解消的である。また、歯の形成は典型的な形態形成である。
ウシの場合、消化活動、つまり分解・解消プロセスがメインなので、形態形成はやや弱い。したがって、歯の形成は十分でなくなるはずである。実際、上下とも犬歯はなく、上顎には周囲の世界に対する《境界》である門歯がない。
また、前頭骨が優勢で、後頭部までこれが覆っている。側頭骨や後頭骨は表に現れていない。
頭部は顎と口腔と鼻から成り立っている。頭部で消化にかかわる部分である。

■角について

通常、ウシでは側頭骨や後頭骨に移行する部分に角が生えている。皮膚が硬化して爪のようになり、それが周りをカプセルのように覆い、その内部では、骨もスポンジ状になり、そこに非常に多くの血液が流れ込んでいる。ここでは、内部と外部が非常に強く遮断されている。(ウシの角とシカの角は正反対)また、角がなくなると、群れの中での順位争いが通常のようにはできなくなる。

■代謝

消化液1lをつくるのに、血液は300l必要である。また、栄養の吸収にも血液の循環が必要である。牛乳をつくるにあたっても、1lのために300~500lの血液が必要である。育種によって乳量は非常に増え、1日に20l以上もの種もある。搾乳時には100lの水を飲む。

■牛の重さ

消化・代謝の動物であるウシは、当然体重も重くなる。

一般的な種類         メス600~700kg オス1000~1200kg
メーヌ・アンジュ(最大種)  メス900kg     オス1760kg
妊娠期間は9ヶ月で出産は主に夜。

■ウシの集団心理と代謝

牛は群れの動物であり、単独で飼育すると、食べる量も牛乳の量も減る。コミュニケーションの活発な動物ではないが、《仲間》の存在は大きな意味を持つ。これは、感情が無意識のうちに胃や腸に影響し、また胃や腸は感情と密接に結びついていることからも当然であろう。
鳴き声、「モー」。身体の深くから、つまり代謝系から出てきているような感じではないだろうか。
牛は、力強くぼんやりした動物である。仮に耳元で銃声がしたら、どう反応するだろうか。ウサギ、猫など他の動物と比較するとイメージしやすいかもしれない。

■ウシは消化・代謝系がドミナント



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