2015年5月13日水曜日

成長点では黄金比の角度で新芽ができる

原理

成長点では絶えず新芽が形成されます。その方向は、上から見ると一つ前の芽から約222.5度旋回した方向です。

シミュレーション

Javascriptで試してみました。

黄金比による植物成長パターン

黄金比による植物成長パターン

2015年5月7日木曜日

Frits Julius『現象学的化学の基礎』第1巻のまとめ

森 章吾まとめ
個人的なまとめが元なので理解しずらい部分があると思います。
そのような箇所がありましたら、Facebook上などでご連絡ください。
改善に努めたいと思います。

シュタイナー学校の化学授業の原型は、オイゲン・コリスコが現場でシュタイナーの助言を受けながら作りました。彼は医師でもあったので、7年生での最初の化学の授業内容が、先端のアントロポゾフィー医学と直接に結びつくことを知っていました。その両者の底流にある視点が上の図です。当然ながら、アントロポゾフィーの薬学、農業なども同じ土台の上に成り立っています。したがって、シュタイナー学校で理科を教えるにあたっては、さまざまな現象を「四大で考える」習慣を身につけておくことが望ましいでしょう。通常の物質科学的思考法、つまり現象のメカニズムや生物学での「生存競争に有利である」といった思考法以外の考え方があることを体感していなければならないはずです。
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理科系で学ぶ膨大な知識は決して無駄ではありません。しかし、そこで学んだ現象事実と、その事実に対する解釈とを厳密に区別する必要があります。「遺伝の発現にDNAは不可欠である」というのは事実ですが、「遺伝の本質はDNAである」というのは一つの解釈です。
四大で考えることで、世界のつながりが見えはじめることを、この本は体験させてくれます。また、それを生徒に体験させるのが、ヴァルドルフ教員の役目の一つであるはずです。(森)

目次

1 導入=考え方の基本

教育の方向性、男女別な問題点、自然とかかわる生きた思考を育てる

01 : 教育の課題としては、生徒に自然現象および自然界のつながりを見せ、それによってそこに精神的な共感を目覚めさせ意欲を育てる。ここで化学(科学)に対し、女の子には停滞&反感、男の子には硬直した思考に陥る、という危険がある。その理由は、授業の中で生きた自然とかかわる思考が展開されないからである。意識の深い層では、本来、自然と人間は結びついている。したがって教師は、そうした層を体験していなくてはいけない。それによって、教材で生徒の思考を活性化できるだけでなく、生徒の本性に対しより深い領域から働きかけることができる。

新たな学問が必要

02 : 人間本性の深い問いに答える学問を発展させなくてはならない。そして、まさにそれがスリリングであるからこそ、教師の情熱も育つだろう。

思考だけでなく感情、意志も育てる

03 : そうした深み至るためには、通常の思考のトレーニングだけでは不十分である。頭による思考は、一種のフィルターになってしまい、事柄の特定の面しか見えなくなる。思考だけでなく、感情や意志も認識プロセスを拡げるために役立てられるよう修練する必要がある。ここで、『いかにしてより高次の世界の認識を獲得するか』に記載された修行方法が役立つ。通常の科学では「客観性の重視」から、感情は問題にしないが、新しい科学ではそうではない。

人間を尺度とした世界観

04 : シュタイナーはそれに対し、自然(世界)は人間を尺度にしなければ理解できないし、またそれを正確に育てなくてはならない、と述べている。
05 : こうした道筋をシュタイナー自身は歩み、非常に深い世界を記述するに留まらず、さまざまな分野で新たな認識や研究方法についてのアドヴァイスも与えている。
06 : その結果、認識方法の中心に人間があるだけでなく、認識結果の中心も人間であることが分かった。
07 : これを化学に応用するには、現象や法則を人間の生命活動との関連で理解する必要がある。(ただしこれは、通常の生理学的な観方ではない)。
08 : この洞察は化学者にとってだけでなく、教師にも重要である。人間との密接な関連を教師が認識すると、次のような成果が現れる。
· 生徒の関心を引き出すことができる。
· 莫大な教材に見通しと構造を与えることができる。
09 : こうした考え方は人を勇気づけると同時に、この膨大な領域をまとめ上げるために必要な人々の協力関係も培われる。

ゲーテは先駆者

10 : 今までの自然科学にその芽があるかを吟味すると、ゲーテの自然科学がそれに当たることがわかる。ゲーテは化学的なことはあまり言っていないが、『色彩論』や『植物学』から学問の方法を学ぶことができる。
11 : ゲーテの研究方法は人間の本性に依っている。世界観に人間像が写されているのである。人間が宇宙になり、宇宙は人間になる。
12 : しかし、そうしたことを見通せるのも、シュタイナーのゲーテ研究があったからである。
13 : ゲーテの方法は、混乱した領域の現象を整理し、学問として明瞭に示すことであった。その領域の最も単純で礎石に当たる現象を、ゲーテは根源現象と呼んだ。ゲーテは根源現象より先へは進まなかった。つまり、理論化はせず、現象を整理するにとどめた。
14 : ゲーテの場合、方法が系統的であること、外界と向かう自らの姿勢の二つが重要であった。この内的姿勢を育てるに当たってシュタイナーが提示した修行はお手本になるし、ゲーテ自然科学はそのよき準備でもある。
15 : 本書では見えるものだけをゲーテ的考えに沿って取り上げている。これはさらなる発展のためのよき基礎になる。
16 : 逆も言える。アントロポゾフィーを通して事柄の背景を知ると、単純に思われたことであってもその全容がわかってくる。また、真のゲーテアニズムには謙虚さと忍耐が必要であるし、それによってアントロポゾフィーの知見と普段は見逃されている日常的な現象を結びつけることができる。
17 : つまり、アントロポゾフィーとゲーテ自然科学は相互に支えあっている。
18 : 通常の考え方は(一面的なので)しかるべき時期に総括すればよい。いずれは原子論も理解し、化学計算もできるようにすべく教材を扱わなくてはならない。ただし、本書の考え方を教師が十分に理解しないで教材を扱うのは望ましくない。

2 化学の授業方法についての基本的指針

初歩的な現象、可能性を秘めた認識方法

01 : 授業を実りあるものにするための2つの基本事項を述べる。まず、化学者、生物学者、医者、等々の専門家であっても、ここで取り上げている中学生レベルの内容を軽く見てはいけない。なぜなら、この方向で精神活動を高めなくてはならないからである。そしてこれは、人間の健全な発達と関係するので、あらゆる人の中の”子ども”に働きかける。
02 : 化学の授業もそれだけで孤立しているのではない。芸術、実習等とも関連している。したがって、可能な限り他のものと関連をつける。またそうすることによって、化学が包括的世界観の一部になりうる。そうした対応を欠くと、子供の調和的発達を阻害する。
03 : 単独の研究者であっても、自分の研究を自然全体、文化全般と関係づける必要がある。(たとえば、ゲーテの『色彩論』がお手本である)。また、芸術(オイリュトミー、絵画、彫刻など)での練習も大切である。これを正しい方法で行うと、意志、感情を育て、世界との新たなつながりを可能にしてくれる。これを怠ると人間や自然が持つ特定の側面にアプローチできない。

教授法的助言

04 : 注意点の二つ目は、教育的に重要な視点である。睡眠と覚醒の交代のように、内容を意識に取り込むだけでなく、無意識にまで降ろすことも重要である。授業では教材を眠りに沈み込ませる準備をし、翌日はそれを導き、引き上げる。学習内容が人間内の隠れた叡智によって吟味されるのである。エポック授業では、こうしたことが行えるだけでなく、人間を健康にもたらすように働きかけることができる。教えた教材を生徒の中で一晩眠らせ、翌日に引き上げる授業のやり方が実験においても効果を発揮することがわかるだろう。
05 : 大人はこのことに目的意識を持って取り組むことができる。自分の中の隠れた叡智を信頼する必要がある。つまり、身体形成と身体機能の中に働いている叡智である。これは物質の本質とも関連し、眠りのヴェールの背後には、物質界についての素晴らしい叡智が存在する。理論的説明に傾きがちになることを克服し、プロセスの中にしっかりと生きる必要がある。そうした体験は、後に一瞬にして一つのイメージに変容する。こうしたやり方で、物質の深みを照らす光を灯すと、日常的な現象でもそのつながりがわかる。実験でも芸術的な要素を発見するはずである。

原子論の特徴

01 : 通常の自然科学的な考え方(原子論)の特徴は、それが自然や他教科と分離している点にある。眠りとの豊かな関係もない。ひょっとしたら”不眠”と関係するかもしれない。
02 : 原子論には肯定的な面もあることは確かである。環境破壊を経験し、個々人の判断力が育ったとも言える。しかし、人間や世界についての深い洞察を困難にしてしまったことに気づいていない。また、原子論的な考えが自然に由来する、というのも間違っている。原子は19 : 世紀末に放射能を介して認知されたが、それ以前はモデルであった。原子論こそが出発点であると考える風潮は時代病であり、自然のより重要な側面がこれによって隠されてしまっている。
03 : ここでの方法は、自然とのつながりを失った人類が、自然との新たな結びつきを作る時代のものである。現実のより深い層との結びつきは、現代の社会的必然であり、不可欠でもある。これまでの思考法は滅亡の方向に向かっている。本書では原子論的説明は全くしない。生徒たちは現代の若者としてそれを知っている必要はある。しかし、それを信じさせる必要はない。

化学の授業で重要なこと

01 : 化学授業の重要項目をまとめる。
1. 教材は子どもの発達段階に合わせる。
· これは子どもの成長に寄与する。
· 世界全体、そして個々の環境と健全な関係を結ぶことができる。
· 思考の教材を与え、正しい構造と現実の内容を伴って考えられるようにする。
· この科目で自己認識を育てることも可能である。
2. 特定の系統に沿って世界観にまとめ上げていく。このやり方は、自然に対しても、文化に対しても有効である。
3. ある程度の量の教材を概念的に知り、記憶する。

ヴァルドルフ・カリキュラムは信頼に値する

02 : ヴァルドルフのカリキュラムは子どもの成長に対応しているので、信頼に値する。しかし、現実にはさまざまな妥協がある。テーマ、スタイル、扱い方が年齢に即したものであるのが理想である。これは交響曲に例えることができる。関連事項を列挙すると次のようになる。
· 各部が全体のつながりで成り立つ。
· 各エポック毎にやり方はさまざまでありうる。
· 本書は学年毎に記述してあり、タイミングが重要であり、該当学年以外では行わない方がよい。
· 教材の量は問題ではない。
· リズムや時間の構造がポイントである。
· 教材を生き生きと扱うように。
03 : 子どもの特徴的な成長と歩調を合わせると、全体が教案の順で可能になることがわかるはずである。それによって、能率的かつ基本に根差して教材を分散することができる。

3 7年生の化学

*1. 火

ヴァルドルフ化学授業の原型

01 : オイゲン・コリスコの「化学の最初の授業」を元にしている。
02 : ただ、多少改変したので、より実践的になっているかもしれない。

最初に取り上げるのは「火」

03 : シュタイナーの指示にしたがって、燃焼から始める。
【森章吾のコメント】背景には「地水風火」の《四大元素》の考えがあるし、この《四大元素》はシュタイナー医学や薬学、さらには農業などの背景に一貫しているバックボーンである。したがって、シュタイナー教育を行うのだとしたら、《物質主義》から《四大主義》に意識が転換されなくてはならない。

さまざまなもの(天然物)を燃やす実験

04 : 生徒に燃える物、特に自然産物を持ってこさせる。
05 : 植物の種類、部位などにより、燃え方がそれぞれ違う。

観察の際の重点事項

06 : 1時間目のクライマックスは詰め物用の木屑(Holzwolle)で、これは美しく生き生きと燃える。
実験の際に注目すべき点は以下の通りである。
· 炎の色と形
· 炎から煙への移行
· 飛び散る火花
· 木の炭化(黒化)
· 灼熱部での炭の変化
· 形のない灰に移行するところは特に重要

観察のまとめ方(学習方法)

07 : 観察の後で、何を観たのかをまとめるのは非常に大切。観たままを明確にするのであって、教師や一部の生徒がその現象を説明してしまうのは避ける。
08 : 観たことについては翌日に説明する。第一日目は、まずはよく観ることに重きを置く。
09 : 翌日に初めて現象の深みに入る。実験を行ったその日に深みに入ろうとしてしまうと、子どもと現象の間に壁ができ、印象を眠りの中に持ち込むことができない。翌日に問いかけることで、子どもの内面の深みから湧き上がってくる問いと、外からの発問とが結びつく。子どもの内面にあって半ば無意識に教室に持ちこんだ事柄に、秩序の枠をもたらすことができる。
10 : すべての実験について今述べた授業法を適用する。

最初の燃焼実験について自然界の関連の中で説明

11 : 二日目に現象のすばらしさに気づく。つまり、光と熱の高みに昇り、反対に炭と灰は下に残る。(すばらしい現象!)
12 : すると、「なぜ木が燃えるとこのようになるのか?」という問いが生じる。こうして生徒は木の由来に気づく。つまり、木とは、根が大地から捉えた水分とミネラルと、葉が捉えた太陽の光が植物の中で一体になり、植物とは言わばそれが密になったものであるから。

物質科学的説明よりも自然界全体とのつながりを重視

13 : 「燃焼では二酸化炭素や水が生じることを教えるのも重要ではないか?」という問いもあるだろう。しかし、この年齢ではそうした物質的側面は重要ではない。自然が提供する像をきちんと知覚することが重要である。ガス(二酸化炭素)は見えないので子どもは気づかない。つまり、現象として捉えられない。先端の学者にとっても、自然が提供するものそれ自体は常に重要である。ある現象が目立つか目立たないか、ということ自体も何かを語っている。また、二酸化炭素を「灰」とする立場はとらない。灰は《地》であり《風》ではない。熱も逃げていくが、《地》ではない。酸素についてはロウソク、二酸化炭素については石灰のところで扱う。
14 : 化学を学び始めた最初から、物質界の(状態ではなく)プロセスを見るのがよい。世界全体の背後にはプロセスがあるからである。「重さ」ばかりを考える現代自然科学に偏らないようにする。

炎的なもの灰的なもの

15 : 自然の中で”炎”を秩序づけると
上・・・輝く太陽
下・・・宇宙からの炎が地に落ちてきた大地
16 : 他の現象においても”炎”的な質を持つものを探すことができる。
17 : たとえば、植物で花は炎的、根は灰的である。
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18 : 人間では
四肢代謝系・・・温
頭部・・・冷&固
炎は物質的な意味だけでなく、魂的な意味もある。また、人間では植物と上下が逆になっている。

燃焼と気体の関係

19 : 燃焼において気体が重要であることを示す実験を行う。
20 : 【実験】 ロウソクの炎にガラス容器をかぶせる。(最近のガラス瓶の耐熱性能はすばらしく、ジャム瓶でも割れない)
かぶせる器の大きさを変えると消えるまでの時間が変わる。ロウソクが消えたあとの容器をひっくり返し、その中にロウソクの炎を入れるとすぐに消える。空気が大きく変化したことを教え、この空気の中では生物が生きられないことを伝える。シュタイナーのプレゼンテーションを参考にすることができる。(教授法第8講)
21 : 【実験】ロウソクを水面に浮かせてこの実験を行い、気体が減少することを示す。
二酸化炭素は水に溶け、水蒸気も水と一体化する。生徒には空気が減ることを見せるだけで十分。
22 : ロウソクはコルクなどに乗せて浮かす。
23 : この現象を定量的に正確に行いたい場合には、リンの燃焼で確認する。空気の1/5が減る。
24 : 火は空気を必要とするだけでなく、それを消費することを生徒に伝える。「酸素」ではなく「燃えガス」でもよい。「窒素」(窒息するガス)は適切な呼び名と言える。

燃焼にまつわるトピック

25 : 燃焼関連のトピックを話す。火事、消火技術、砂、布、水、泡、オーブン、バスバーナー、ガソリン気化器、ランプなど。

火に対する人間意識の変化を取り上げる

26 : 火に対する関係が時代と共に変化してきたことに触れる。かつては「火=天からの贈り物」で神殿や貢儀と関連していた。現代でもその名残がクリスマスのロウソクや香に見られる。
27 : アドヴェント中のオランダの習慣(ニコラウスの祭り)は特筆に値する。聖なる歌を歌いながらストーヴの周りに集まり、後には靴を煙突の下に置く。家の床で火をたき、煙を天井から排気した時代を思い出させる。火=暖、炊事など生活の中心であり、神事の中心であった。「サンタクロースが煙突から来て靴の中にプレゼント」という伝説もそれと関連している。(もし子どもに話すならこの部分、もう少し詳しく訳す)。
28 : 魔女も箒に乗って天窓から入ってくる。
29 : 天窓→煙逃がし→煙突と変化してきた。その後、移動可能なストーヴが現れる。つまり、ストーヴの歴史は上から下に向かう。その中で火が閉じ込められ、コントロールされるようになった。火を神や自然からの隔離することに伴って自我意識も発達していった。
30 : セントラルヒーティング=現代の特徴的な火の扱い方。
31 : つまり、火の扱い方は、自我が世界とどのように向かい合っているかと関係している。
32 : こうした内容をどこまで授業で取り上げるかは教師の裁量による。しかし、背景を知っているのはよいだろう。
33 : 蒸気機関やエンジンでも火が重要であることにも触れる。

イオウ、炭素、リン

01 : こうした一般的な観察をしてから、イオウ、炭素、リンの燃焼を扱う。
02 : 他にも酸素と結びついて燃える物質(マグネシウム、亜鉛、鉄など)もあるが、ここでの意図では扱わない。これらはサビもする。これらについては10 年生でのサビと燃焼で扱う。

イオウ

03 : 【実験】イオウの加熱と燃焼:イオウ・黄色い粉末・青い炎(青い泡のよう)・刺激臭・しばらくすると息苦しく、咳が出る。この実験は容器内かドラフタ内で行う。

炭素

04 : 【実験】炭素の燃焼:炭素燃えている炭素を暗がりで動かすと、わずかの間、空中に炎の線が見える。これは目の錯覚ではあるが、(著者ユリウスは)炭素の本質を語る現象だと思っている。同じ現象は燃え上がるたき火でも見える。
05 : 炭を積み上げて燃やす。(内から灼熱はするが、外は黒いまま)。これも特徴的現象。

リン

06 : 【実験】リンの燃焼:リンを水の中から取りだして濾紙で乾かすと煙が出るのが見られ、さらに暗くすると光っているのが見える。紙か木の上で線を描くとよりわかりやすい。跡が光るのである。試薬瓶に髑髏マークがついてはいるが、それについては語らない方がよい。丁寧な観察の妨げになるからである。
07 : イオウでは光が少なく、熱が多であった。リンでは、光が多く、熱が少であった。
ただ、毒性があるので扱いには注意が必要。常に水中に保管し、子どもが触れないように注意する。リンで線を描くときには、濡れ雑巾で持つとよい。ペンチで持つと滑るし、割れて飛び散ればすぐに発火する。また、決して素手で持ってはいけない。
08 : 【実験】赤リンにガスか熱した針金で点火する。黄白色の明るい炎、濃い白い煙。

イオウ、炭素、リンの他の現象と本質

09 : この3つの元素の自然界や人間におけるそれぞれ特有な役割を見る。
10 : イオウの産地は火山地帯である。これらの場所は地殻とは言っても不安定である。イオウも一見すると黄色い石だが、熱すると石との違いが際立つ。容易に融解し、動き始め、そして、蒸発する。容易に引火し、熱を発する。イオウがかつて、「太陽の担い手」と呼ばれたのも理解できる。本来は「上
に属するものが地中に押し込められたことで地中のカオスの原因になっている。
11 : リンは光を放つだけでなく、ゆっくりと消耗していく。絶えず冷たい光に移行していくもの。これは《地》の質ではない。「リンがどこから来たか」と生徒に問うなら、「星から」という回答がありそう。子どもはこれをすぐに理解するが、かえって大人には理解が難しく、考え方の練習が必要。自然が単純な言語で語る言葉を理解しなくてはいけないのである。この関係をより明確に示してくれる実験があるが、それは「11年生のリン」で扱う。「リンは地上における星の働きの担い手」であり、これは霊学的真理でもある。
12 : イオウ:深みのカオスの力
· 炭素:両者の中間、地球表面、実際に植物を炭化できる
· リン:高みの秩序の力

三者の人間との関係

13 : イオウの人間への作用を見ると、これは代謝系(下半身)に働く。イオウ温泉、イオウの多い食事は代謝系を活発にする(11年生のイオウ)。作用は上に向かうし、この点は地球と同じ。ただし、カオスに陥る危険がある。イオウとは「うごめく熱」である。
14 : リン作用は脳に見られる。イオウの働きは激しく打つようにバラバラにする働きであるが、リンは周辺から内側(中心)に向かう。「光の放つ硬化」とも言える。
15 : 炭素は栄養、呼吸と密接に結びついている。しかし、この話は7年生には難しいので、8、9年生で扱う。

オプション的テーマの一つ「マッチ」

16 : 7年生(あるいは8年生)で扱いうる内容火力における炭素の意味(あらゆるところに現れる)マッチではこの3つが共に使われている。マッチ(着火)の歴史を簡単にまとめると
17 : 火を起こす:木をこすり合わせる、火打ち石
18 : 人は、リンの存在を知るとすぐにマッチに応用した。マッチの作り方は、軸木を溶けたイオウに浸し、さらに黄リン、膠、砂を表面につける。するとざらざら面にこすり合わせるだけで着火する。しかし、危険かつ有毒だったので禁止となる。
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さらに安全マッチが発明される。これは、硫化アンチモンにKClといった酸化剤(酸素を放出させ燃焼を促進する)を加えて軸木に付け、赤リン、ガラス粉、イオウ化合物からなるザラザラ面にこすり合わせる。
19 : さらに木部に特定の塩を含ませた。(頭の部分が燃え落ちにくいように)。
20 : マッチはよく知られているし、これを教材に技術について語るとよい。また、マッチ箱の構造は目的にかない、しかも単純で技術を考える上でよい教材である。生徒にとって既知の事柄について、何が使われているか、などを話すとよい。
21 : マッチの次にくる発明は、と考えると、それはライターである。これは驚くべき事に、改良された火打ち石と言える。(ただし、21世紀のライターはほぼ圧電素子を使っている。Zippoを入手する?)
22 : 点火についての神話的側面は「11年生のリン」で話す。

*2.塩

カルシウム

01 : 塩はカルシウムから始める。

自然界のカルシウム循環

02 : 自然界のカルシウム:貝、卵の殻、骨、石、鍾乳石(水から再び石に)などがある。
次にカルシウムの循環を取り上げる。カルシウムを含む水の表面に薄い膜ができあがる現象は重要で、鍾乳石はこれが滴下してできあがる。二酸化炭素について話をしてあれば、石灰岩が炭酸水に溶解し、さらに再び二酸化炭素を奪うと沈殿することも話せる。
03 : カルシウムのこの変容原理が元になり、ありとあらゆるフォルムが作り出される。
04 : より大きな循環もある。小川の底では石灰が平面で沈殿するし、滝では、枝分かれ、ごつごつした覆い状のかたちなど、さまざまな形ができる。
05 : さらに大きな循環を話すことができる。海では動植物が石灰で殻を作る。そして、貝殻などの一部は再び溶解するが、大部分は堆積する。石灰岩でできた山々はそれが地殻活動で隆起してできた。
06 : 絶え間ない溶解と沈殿を行っている。子どもに「絶え間ない循環運動」というイメージを与える。
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07 : 骨格:体内で溶解と沈殿が起きている。高齢になるとこれが沈殿に偏る。また、管状骨ではカルシウムが絶えず更新されている。大腿骨の成長を見ると、子どもの骨は大人の骨の空洞部分くらいの大きさでしかない。これだけ成長できるのも、溶解と沈殿があるおかげである。

カルシウムの実験

この本で取り上げられているカルシウム関連の実験をまとめておく。
· 石灰岩の加熱、生石灰の生成(長時間実験なのでやり方と結果だけ?)
· 生石灰に水
· 石灰岩を希塩酸中に⇒二酸化炭素の発生(マッチの火を消す)
· 石灰がアルカリ、二酸化炭素が酸であることを示す(リトマス、赤キャベツ)
· アルカリ、酸の味・空気中の消石灰の塊が少し硬くなる(水酸化カルシウム→炭酸カルシウム)
· 消石灰水(透明)に二酸化炭素を反応させる⇒白濁
· 過剰な二酸化炭素でさらに透明化(炭酸水素ナトリウム)⇒鍾乳洞の原理(オプション)
08 : 石灰岩を熱する。煉瓦の炉に大理石を入れ、コークスで加熱。後に酸素を送り込む。

09 : 焼くとぼんやりした感じになり、ぼろぼろになる。冷ましてから、水を注ぐ。生きているかのように膨らみ、やがてバラバラになる。この際に発熱する。
10 : 焼く際に二酸化炭素が出ていることは確認しにくい。そこで別な方法で石灰岩から二酸化炭素が出ることを確認する。石灰岩+塩酸→泡が出る:この泡でマッチの火を消すことができる。つまり、火を消す種類のガスが出ている。
11 : 貝殻を使うと非常に細かい泡がらせん状の動きをするのが見られる。(らせんになることは要確認)
12 : 石灰窯(いしばいがま)について話すのもよい。炭酸カルシウムを加熱して酸化カルシウム(生石灰)を作る。(Wikiに説明あり。)
13-15 : リトマス試薬(赤キャベツの汁で代用可)で性質を調べる。
石灰液:赤→青     二酸化炭素:青→赤
試験紙より溶液の試薬の方が効果を見やすい。
16 -17 : 味:二酸化炭素は少し酸っぱい。
消石灰液は石けんと似た苦い味。
18 : 石灰岩を焼くことで石灰石は上下二つに分かれる。
· 上:二酸化炭素、これは、軽く、赤にし、酸である。
· 下:消石灰、これは、重く、青にし、苦い。
このように、多くの点で対極的。
19 : 美しく結晶し、2つの素材に分解しうるものを「塩」と呼ぶ。たとえば焼いた石灰では、硬い部分(アルカリ)が下に残り、ガス(酸)が逃げていく。(酸アルカリについては10年生で扱う)
20 : 水を含んだ粥状の消石灰を放置すると、やがて少し硬くなる。これが壁塗り技術の原理である。
21 : 消石灰+水→白濁液 ⇒ 濾過 ⇒ 透明な液:
これはリトマスを青、表面に流氷状の膜 ができる (自己閉鎖作用)。
22 : 流氷現象の確認実験:二酸化炭素を入れる→白濁
このように、消石灰は二酸化炭素を求め、生石灰(焼石灰)は水を求める。つまり、カルシウムは渇望的物
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質と言える。
23 : 二酸化炭素を吹き入れるのは呼気でも可能であるが、その実験はもう少し高学年がよい。
24 : 生徒たちがついてこられそうだったら、過剰な二酸化炭素で再び透明化するのを見せる。加熱するとガスが逃げ、再び濁る。この現象が鍾乳石の形成と関係している。(YouTubeには「透明にならない」というデモンストレーション実験の動画がある)。
25 : 消石灰の「消化作用」に触れてもよい。堆肥に混ぜるのである。石灰質土壌はアルカリで腐葉土が少ないが、堆肥に混ぜると発酵が進む。
26 : 石灰の建築利用を話す。焼いた石灰岩:二酸化炭素で硬化する⇒好きな形にできる人工の岩である。すべてのコンクリートはこの原理である。
27 :
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石灰と四大の関係

食塩

結晶性の観察

01 : 黒い紙の上に食塩を置いて観察すると、「純粋性」の印象を受ける。

溶解実験と飽和食塩水を用いた実験

02 : 自然界では食塩は水に溶けている。
【実験】食塩を水に溶かす:このように単純なことでも子どもを興奮させられる。
· 初めは簡単に溶ける。
· しだいに溶けにくくなる。
· やがて底に残る。
市販の食塩だと少し濁るので濾過する(現代の食塩は?)。この透明な水溶液で実験する。
· 少しこぼすか暗色の台にこすりつける⇒白く輝く結晶。
· 時計皿に入れて放置⇒やや大きな結晶。
· 濃HClの水溶液に飽和食塩水を滴下し、暗所でそこに光を当てて観察する
⇒ 「素晴らしききらめき」が見える。目に見えないくらいの微細な結晶ができている。この現象は《結晶》の本質を語っている。
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03 : 溶液の一部を蒸発皿に入れ、加熱して食塩を得る。ここから製塩について話をする。

製塩について触れる

04 :
· 寒冷地:塩水を凍らせる。氷は真水なので残りは濃い食塩水になる。
· 温帯地方:海水を風の吹く壁に少しずつ流し、濃縮する。
· 熱帯地方:海水を平らな容器に入れ、太陽熱で蒸発させて濃縮
05 : ドイツの製塩について説明してもよい(具体的なやり方は不明)。現代よりロマンのあるやり方であった。最後に現代の製塩を説明。

塩の生理作用

06 : 塩の栄養的な意味人体内の基盤になっている。
· カルシウム⇒骨
· 食塩⇒血液中で厳密に決まった濃度になっている。(生理食塩水=0.9%)
07 : 草食動物は食塩を激しく求める。塩を含む泉を激しく奪い合ったりもする。
08 : 塩が高濃度になると生き物は少なくなる。
死海や塩砂漠⇒保存食品、つまり食塩=反腐敗
09 : この反生命性が意識を目覚めさせる働きに関連する。正しい場、正しいやり方で生命活動を抑えると意識が明瞭になる。(後にルネッサンスについて触れるときには、メディチ家やフッガー家の繁栄がそれぞれ胡椒や塩の取引であったことに触れられるだろう。By Mori)
10 : 古来、塩が儀式や秘儀的に使われた理由がわかる。
1. 幾何学的結晶性
2. 透明
3. 純白健康で調和的であり、
これらは、理想的な地上状態 ⇒ 地上を住み家としていると感じる。

塩=酸+アルカリ(食塩=塩酸+水酸化ナトリウム)を示す実験

11 : 食塩が塩酸と水酸化ナトリウムからなることを説明する。ただ、食塩を加熱しても分解はしないので、これを提示するのは難しい。
【実験】 濃H2SO4に食塩を加える⇒泡が出て刺激臭、湿ったリトマス紙を赤に、この気体を水溶するとHClになる。
12 : 水酸化ナトリウムが食塩からできることを示す。これは、
· 輝きのない白色の粒・すぐに湿りヌルヌルする
· 水によく溶け、その際に発熱
· 熱湯に入れると激しく沸騰
· 生石灰ほどではないが、激しい
· 生体由来のタンパク質を溶かす⇒少なくとも、これで煮ると柔らかくなる。
13 : 【実験】シャーレを3つ用意し、希NaOH、希HCl、水道水を入れ、これに触れる。
NaOH:ヌルヌルし石けん的HCl:引っかかり感水道水:指を洗う
14 : リトマス液にNaOHを加え、さらにHClを加えると、透明→青→透明→赤、の美しい色彩変化を見られる。
15 :
アルカリ
苦く、不味い 刺激的に酸い
リトマス
物質状態 固化する物質 逃げていく物質

人間との関係

16 : 胃:酸⇒身体が受け入れられない物を遮断
腸:アルカリ⇒ここから血液中に栄養を取り込む
17 : 筋肉を動かすと酸が発生⇒外に向かうもの
静かに考えると脳にアルカリが生じる(要確認)⇒内に向かうもの
18 : こうした物質が体内でどのように現れるかは、物質の本質を解く鍵になる。
アルカリ 収縮的 内向き 受動
放射的 外向き 能動、攻撃的

【注】内向き外向きについては、コリスコの授業中にシュタイナーが言っている。

水酸化ナトリウムと塩酸から食塩を合成

19 : HaOH粒にHClガスを触れさせれば簡単に反応は起きるが、目立たない。この反応を激しく行わせる。
【実験】濃HClにNaOH粒を入れる。表面に触れるや否やパチパチと鋭い音と共に輝く食塩が雪のように出てくる。粒を水中に落とすとさらに激しく反応する。これを試験管で行うと、激しく沸騰し、試験管が台の上で跳ねる。

*3. 水

授業の背景、Tria Principia 「三原理」

01 -08 : Alchemy(錬金術)のTria Principiaは包括的世界観の基礎である。
これについては下巻で詳しく取り上げる。
Sulfer(イオウ)、Mercurius(水銀)、Sal(塩)の3つで《三原理》である。
· Sal:固化のプロセス
· Mercurius:水の働き
· Sulfer:光と熱のプロセス
人間においては : Sal:頭部 : Mercurius:血液と呼吸の相互作用 : Sulfer:血液である。
授業では、火、塩、水の順に取り上げる。

授業方法についてのコメント:《水》を化合物としては扱わない

09 : 水では、《結びつける》働きに着目、SulfurとSalの両極の間で絶えず行き来している。
ところで、水を根源的で一体的なものとして扱い、ここでは水素+酸素としては扱わない。水がHとOからなることは後に知らせる。できるだけ水をそれ自体として扱い、化合物という扱いはしないのである。2つの素材から、真に一体となったものが生ずるところが化学の不思議なところである。

Tria Principia での「結びつける水」のイメージへ

10 : まず、水の本性的な面を特徴づける。水には、一見すると、一種の内部矛盾がある。つまり、
· 川の流れを見ると、水は常に途上にあり、地球全体で一体である。
· 一方、無数の小さな粒にもなる。(落下する水滴は途中で砕ける)。
しかし、両者で同じことも見られる。つまり、まとまった動的全体をなす点である。分離していても各部が相互に関連している。形は「大いなる全体」=宇宙と同じである。
11 : シュタイナーのクリスマス・イマジネーション「地球は水銀の球になぞらえられる」。ここでは表面に周囲の世界が写し出される。地球も水銀粒も宇宙の写しである。
12 : 特に素晴らしい現象がある。露の粒をルーペで見ると、そこに世界全体が写る。
13 : 空気中の水蒸気が、通常は(星の降り注ぐ)夜に結露し、寒いと氷になり、葉の縁などに結晶化し互いに離れる。太陽が昇り暖かくなると、これらは光に輝き、空気がそれを優しく吸い上げていく。
14 : 丁寧に観察すると、この現象にTria Principiaが認識できる。つまり、露はSalとSulfurの両極を行き来している。
15 : Tria Principiaを子どもに教えることが授業の目的ではない。しかし、授業の目標設定のためには必要である。
16 : Sulfur⇔Salは地球規模でも見られる。極地での結晶化と熱帯での水蒸気化である。
17 : 温帯地方ではそれが夏&冬という時間的なものの中で現れる。
18 : 水は液体であるが、そこから一旦水蒸気として離れ、また水に戻る。その際に、完全に戻らないと霧、雲などとなり空中に漂う。それが下に降りてくると、露や雫である。粒子がさらに大きくなると、雨となり、
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さらには雹になる。ちなみに雪は、水蒸気から液体状態を経ず、直接に雪になる。
19 : 雪や氷もやがては水に戻る。
20 : 冷却の際には、過冷却という不思議な現象もある。
21 : 氷河の様子を見ると、氷は固体《地》であっても、「流れて」いるのがわかる。ちなみに、氷は圧力で液化する。スケートが滑るのはそのためである。
22 : 水には固化への抵抗が見られる。それを現す現象が、氷が水に浮く点である。これは物質としてはかなり例外的である。もし氷が水に沈むとしたら、湖や海の底に沈んだ氷は再び浮かび上がることはなく、底は死の世界になる。
23 : 水には水平と垂直の循環がある。
24 : 対流:熱によって密度が変化する。
25 : 【実験】水を入れた大型ビーカーなどに対流が見えるように何かの物体を入れ、バーナーで横から加熱する。


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セントラルヒーティングはこの対流の原理を用いている(実際には、多少改良されている)。図
26 : 拡張収縮を「軽くなる」「重くなる」と結びつけると現象がわかりやすくなる。

自然解釈についての注意点=因果関係ではなく

27 : 日常的現象を通じて総合的な世界観や諸現象の構造的つながりを示す。したがって、説明の際には言葉に注意する必要がある。「氷が水に浮くのは、凍る際に膨張するからである」と「から」と言ってしまっては、ある意味で間違いである。こう言ってしまうことで、事柄の関連の可能性を限定してしまう。この現象は、「それ以外にはありえない」くらい全体と結びついている。氷が浮くことと、膨張には当然関係はあるが、それを原因&結果の因果関係で結びつけてしまうのは望ましくない。さらに、《原因》という概念は使用を避けた方がよい。関係を自然界の秩序として、関係そのものとして示す。自然界の秩序をより高次な意味で《原因》と見なす。つまり「現象とは自然界の秩序が表情として表れている」と捉えるのである。
28 : 海洋での水循環について話す前にセントラルヒーティングを取り上げるとしたら、それは間違っている。技術とは自然の模倣であって、逆ではないからである。海でも水の沈降や蒸発は見られる。ただし、セントラルヒーティングよりは見通しにくいだけである。
29 : 海流によって熱が移動し、熱の均一化が起きる。それゆえ、イングランドやスコットランド(緯度は樺太並)でも椰子の木が生育する。(netで確認できる)。

人間内での媒介するものとしての水

30 : 血液循環によって水&熱の循環が起きている。つまり、自然界と同様、水によって熱、ガス、物質が輸送されている。ただし、体内のそれは自然界のものより厳密にコントロールされている。
31 : 人間内のこうした現象も自然現象と一致することを示すが、単なる寒暖ではない。人間では内からのImpuls(動因)で熱が動く。もちろん、熱の均一化は起きるが、人間では自己熱に特定の形を与えることが重要である。この熱の流れは十分に統制が取れているし、外からの影響と闘っている。(直立した人間を考えると、上にある頭部が冷で下にある代謝四肢系が温である。これは自然界の熱分布と反対であるし、この上下という視点を取り入れれば、動物の熱とは明らかに違う。By Mori)
32 -35 : 他にも話すことはたくさんある。
熱だけでなく、気体や山からの浸食物も運ぶ。
船の航行や物の輸送も水と関係している。
こうしたことも、実験で示すことができる。一例として、気象現象を実験的に示す。フラスコの水を熱し、その出口に冷水を入れた試験管をかざすと、そこに結露して雫が落ちる(図)。

現象の配置の仕方で本質がより明確になる
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36 : 現象を、たとえば対極的に、並べると、それらをより深く見ることができ、実りが大きい。たとえば、「水で塩を溶かす」と「水で火を消す」という現象を対極として並べる。水を中心に、一方でSal、もう一方でSurfurとかかわっている。

「結びつけるもの」を示す実験

37 : 水には結びつける力があるが、これは化学反応でも関係する。
【実験】クエン酸粉末と重曹粉末を試験管に入れても、何の反応も生じない。そこに水を加えると、激しく反応する。
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*4.金属

01 -02 : 教える時期、Kolisko:7年生、Julius:8年生
11,12年生で詳しく取り上げる。(下巻)Wilhelm PelikanのSieben Metalleは重要文献。

教材としては七金属を取り上げる

03 : 七金属(鉛、金、銀、鉄、水銀、錫、銅)を中心に取り上げる。惑星との関連(それぞれ、土日月火水木金と対応)を確証するのは難しい。しかし、現象から関連を知ることはできる。

7,8年生では用途、精製法、加工法から特徴を探る方向で授業

04 : 金属の用途、精製法、加工法からそれらの特徴がわかる。
05 : 「最も古くから加工されてきた金属は?」と発問する。これは「金」である。熱を加えずともハンマーで加工できる。したがって、石器時代にも金の加工品はあった。
06 : 石器時代の石斧の作り方の説明は子どもたちのお気に入り。火打ち石(黒曜石?)の角を別な石で叩いて割る。叩いた側の裏側に貝殻状に割れた刃ができる。より精巧にするには注意深く丁寧に細かく割る作業をしていく。
07 : 青銅時代:銅+錫を木炭で加熱⇒硬い青銅ができる。
08 : 鉄を精製するためには《火》を手中に収めている必要がある。
09 : 金属精製の事実関係を伝えるだけでなく、人類の金属に対する姿勢も伝える。例えば古代ペルーでは金は商業とは無関係に宗教的に使われていた。また、インカでは金円盤=太陽、銀円盤=月であった。
10 : 金に対するこうした姿勢の名残もある。たとえば、結婚指輪や戴冠式である。
11 : それに対し,ブロンズ(青銅)は初めから道具(例外は装飾的なピン)であった。もちろん例外的なものは現在も存在し、ブロンズ像や教会の鐘は実用一点張りではない。
12 : 鉄の使用は、地上的な力を自分のものにしたことを意味する。宗教的な用途はない。
13 : 鉄、銅、鉛などの金属の文明内における用途には、特定のモチーフが見られる。そして、このモチーフに惑星的な質が関連する。金属のキャラクターとも言うべきものがある。たとえば、銅(金星)と鉄(火星)は対極的である。
14 : 以下、話を用途とモチーフに限定する。
15 : 鉄:「力」であり、磁石も直接に「力」を現す。
16 : 銅:「美」、しなやかさ、加熱で虹色が現れる。ハンマーで変形。熱&電気の伝導。銅打ちは芸術的。蛇口(銅と銅を圧着することで最も密閉性がある)、やかん、暖房配管。
17 : 鉄と銅の対極性は色との結びつきでもわかる。(何を意味するかの具体的記述はなし)。また電磁石は鉄と銅の組み合わせで、それによって力と関係する。
18 : 鉛は重さ&慣性と関係し、輝きもすぐに失われる、閉じて覆う仕草であり、外からの働きかけを弱める。(放射線防護エプロン)。活版印刷の活字は柔らかさ溶けやすさが利点になっている。
19 : 銀は「光」と関係する。鏡(銀鏡)作りは容易に実験できる。ここでは像が主役で鏡は脇役になる。また、写真はハロゲン化銀を使っていた。
20 : 銀は熱と電気をよく伝える。しかし、銀を「光的」と言ってしまっては誤りである。むしろ、光をまったく受け入れず、表面で反射している。
21 : 水銀の質は動きである(温度計や気圧計)。また、アマルガムとして他の金属を運ぶ。
22 : 錫は放射状フォルムを持つ。外側は鉛に似て鈍い色であるが、内側に構造を持つ。硬化の力はブロンズに現れる。また歯科でも使われる。鉄を覆うと缶詰に使われるブリキになる。
23 -24 : 金は一番重い(密度が高い)ので、最も地上的と言える。しかし、金箔は軽く、光と戯れる。つまり、光と重さの架け橋となる。価値交換の媒体であり、それゆえ欲望的に誤用される危険もある。しかし、他者のための道具ともなりうる。また、「メッキ」とは見せかけの高貴さの比喩でもある。
名人が打つと芸術的に造形できる。そこには素材にも技術にも高い質が見られる。
25 -27 : 薬や毒としての生理作用を見ていくと、同様なモチーフにたどり着くことがわかる。
Pelikanの「SiebenMetalle」を参照のこと。他にも重要な金属はある。
太陽を中心に対極的に見ることができる。
                  太陽(金)
       金星(銅)                火星(鉄)
   水星(水銀)                      木星(錫)
月(銀)                                土星(鉛)

*8年生での授業

コメント

01 : 8年生のテーマと9年生のテーマがほぼ同じなので、一見すると混乱を招く。しかし、よく見ると、教材や重要な視点がきちんと分けられている。
02 : 8年生:炭水化物、脂肪、タンパク質を栄養素として扱う
9年生:有機化学の諸要素
9年生で時間をさけない部分を8年生でうまく扱うことができる。また、出発点がよいと9年生の基礎になる。教材や概念的化学式を早く扱いすぎない!!
単純なものから意味のあるものを伝える。芸術的に行うと、生徒が生き生きとする。

01 : 糖から始める。まず、《水》との関係を調べる。
1. 水を沸騰させ、
2. 砂糖を底に少しだけ残るくらい加える。
3. それによって、水面が上昇することに注目→数倍になる。
4. これを冷却する→粘り気のあるシロップ状になる→やがて結晶化が始まり、全体が固まる。
ここで重要な問いかけ「この現象がどのように応用されているか?」
特に女子が料理とのつながりで知っている。つまり、すでに知っていることを思考的に捉えるのである。場合によっては、ここからさらなる応用に話を進めることができる。
02 : 糖の溶解と硬化は、糖衣、糖細工、シロップ、ジャムなどに応用されている。
03 : 《火》との関係
砂糖を試験管に入れ、注意深く加熱する。うまくやると液化しても無色である。
そこから、黄色、きれいな茶色、さらに香が生じる。プリンなどに使うカラメルである。
04 : 激しく加熱:褐色から黒になり、煙(可燃性)が出る。
05 : この実験はさらに激しく行うことができる。
空き缶にかなりの量の砂糖を入れ、そこに緩やかに蓋をする。→膨張し、蓋を吹上、泡が出て、引火し、後には輝きのある炭が残る。
06 : 砂糖をガスバーナーの炎に吹き込む。→一粒一粒が燃え上がる。
スプーンに砂糖を取って、それを炎の中で加熱しても面白い。
07 : 葉における糖形成に触れることはできる。本来は9年生の内容であるが、「二酸化炭素の吸収および酸素の発生」について取り上げてもよい。
ただし、すぐに学識的な方向に向かないこと。そうではなく、素材のバイオグラフィーを作る感じで、「外的影響でどのような反応を示すか」、とか「四大元素とはどのような関係にあるか」などを取り上げる方がよいし、そうすれば抽象化は不要である。「自然界のプロセスに対する生き生きした目」を育てる。
ここでは《風》《水》《光》との関係をまとめる。自然界における上下、つまり宇宙的なものと地上的なもののについては必ず触れる。
《風》《熱》《光》 上にあるもの
   【糖】     糖はその中間
   《水》    下にあるもの
08 : 水によく溶ける=水領域から生まれてきた。
糖は自然界では常に液体で存在し、固体化するのが難しい。
植物内では濃度の薄い糖として存在し、人間や動物内では血中に一定の割合で含まれる。
09 : 加熱で気体が発生する。つまり、《風》と類縁。
10 : 炎中で燃える。太陽の《熱》と《光》から生じている。
11 : 糖の中では、《水》と《火》という対極的なものが一体になっている。
また、血液中にそのまま入ることができる。なぜなら、血液も《水》と《火》が一体になったものだから。
植物では糖はセルロースなどに硬化し、人間では糖は動きや熱の元となる。
12 : 糖の種類をどう教えるか。Juliusの見解では、8年生では糖全般について語り、9年生では糖の種類も考慮する。
13 : 具体的には、ショ糖とブドウ糖(果糖)の違いが問題になるときに教える。
還元性のある糖とない糖が、フェーリング反応で分けられる。

デンプン

01 : ジャガイモなどのデンプンを指でこねてみる。→乾いた感じ。
02 : 少量のデンプンを水の中に入れる。→しばらく浮いていて、やがて沈む。しかし溶けない。
03 : 炎の中に入れる。→融けずに、炭化する。炎は糖よりずっと弱いが、長持ちする。
04 : 日常との関係。料理の焦げ。ソーダ(アルカリ)を入れて沸かすと焦げが取れやすい。
05 : 植物中のデンプンを考える。糖は水溶液となって移動する。光合成段階で余分な糖はデンプンに変化する。このデンプン粒は顕微鏡で観察可能である。
夜などの暗期にはデンプンが糖に変化する。また、生命活動が止まるところでは、逆に糖からデンプンが形成される。これは密化であり、固化である。
植物ではこぶ状になったところや種子にデンプンが多い。
樹では夏に樹皮にデンプンが蓄積される。
種子では春になると糖に変わり、動き始める。
06 : 植物内での糖:溶液になって植物全体に流れていく。
植物内でのデンプン:無数の粒になってその場にとどまる。このデンプン粒を顕微鏡で観察すると、一つにまとまっているし、層状になり、中心を持つことがわかる。
つまり、全体性の中で活動する植物や、連続的な流れから「押し出された」素材であることがわかる。
植物は外界にオリエンテーションしているのに対し、デンプン粒は中心にオリエンテーションしている。
07 : デンプン&熱湯
デンプンを冷水で溶いて沸騰水に加える。粒が消え、半透明でべったりしたものができる。沸騰で泡ができるが、その泡の動きがゆっくりになる。冷やすとさらに固まる。=デンプン糊。これが料理に応用できる。(子どもの好きな話)
パンを焼くときにもこれと似たプロセスがある。
08 : デンプン&水
加熱で不完全に一体化する。つまり、両者の境界がぼやける。
デンプン粒が水を含み、膨らみ、構造を失い、そして全体と一体化する。
09 : デンプンの糖化とその応用
適切な温度と湿度で種子を発芽させた後に水溶、加熱、乾燥するとデンプンと糖の両方を含むものが得られる。麦芽。
10 : このプロセスはジャガイモではわかりにくい。
凍ったジャガイモの不味い甘さについて述べられているが、日本ではこれを経験することが少ないので、割愛。
11 : パンかデンプンを唾液で糖化する。「食べたデンプンはすべて糖になってから血中に入る」くらいのことは話す。細かいことは9年生。
12 : 糖・デンプンの存在証明実験。生徒は大好き。
9年生に持ち越す場合もある。
13 : フェーリング溶液を使うが、出来上がったものを生徒に見せるのではなく、作る過程も見せる。
(a)硫酸銅+水酸化ナトリウム→青い沈殿
(b)同じことを十分な糖の存在下で行う。青が濃くなるが沈殿はなし。
(c)これを加熱してもショ糖の場合は変化しない。
ところがブドウ糖を用いると、青から赤茶系の沈殿に変わる。
これを効果的に見せるには、大きな三角フラスコがよい。
(d)通常のフェーリング反応。フェーリングA,Bの両液を用意しておく。
両液を混合し、糖は入れずに加熱する。⇒ 色は変化しない。
被検査液にこの青い液を少量加えて加熱すると、赤くなる。
14 : デンプンはヨードで検出。ヨウ素の結晶を濃アルコールかKIで溶かす。
茶褐色の液体がデンプンと触れると濃紺に変わる。これは加熱すると消え、冷えると再度現れる。
15 : この二つを使うと、食品についてさまざまなデモンストレーションができる。
ニンジンの汁:フェーリング+、切り口にヨウ素-
ジャガイモの切り口、ヨウ素+
16 : 砂糖はフェーリング-であることを示す。
砂糖を酸で加熱し、それを中和してからだとフェーリング+。
こうして砂糖からブドウ糖や果糖が生じうることが示せる。
それゆえ、酸味のある料理に砂糖を加える場合、冷やしてから加えるのがよい。
17 : 植物内の糖
【糖】生命の基礎として薄い溶液で存在
(1)そのまま蜜として外へ(匂い、昆虫)
(2)外に向かって硬化。デンプンやセルロースに変化
生徒にときどき全体的展望を示すことが重要。

パン

01 : パン焼きは特に重要。
02 : 古い農家のレシピでのパン生地の作り方。
小麦に水を加え、さらに酵母、食塩、蜂蜜を加え、よく混ぜ、さらによく練る。
焼いた鉄板の上に伸ばし、オーブンで焼く。
03 : レシピは簡単であるけれども、奥にはいろいろある。主食である。
人間は自然界の中心的存在であり、パンはその主食である。上述のレシピには自然界全体が含まれる。これを一つの実験ともみなせるし、栄養物が身体に取り込まれるときの準備ともみなせる。小麦粉は《地》の要素であり、そこに《水》、《風》、《火》のプロセスが加わる。プロメテウスによる人間の創造の話を読むと、そこにも同じ要素が順に現れる。また、三原理の立場から見れば、塩、水、蜂蜜(熱)がある。
植物そのものを見ると、イネ科は最小の物質で直立する。この構造体は一つの芸術作品であろう。植物を直立させ、最も重い穂をできるだけ高くもたげる。重さに対し、常に勝利を祝っている。
04 : この事柄はジャガイモと比べると事情がよくわかる。イネ科は重さを克服し、ジャガイモは重さに従っている。
05 : 「直立=重さの克服」は人間特有の事柄である。そしてこれは意識の光を手に入れる土台になる。穀物はこの姿勢の元になっている。《地》の克服という意味では、キリストの復活はそのシンボルである。それに対し、ジャガイモは穀物の対極に位置し、重さに従い、闇の中で育つ。
06 : しかし、ジャガイモを復権させる実験もある。
ジャガイモを擦りおろし、水を加え、静かに沈殿させる。⇒ここから馬鈴薯デンプンの結晶ができる。
07 : ここで、食物ではないが、セルロースについて触れるのが良いように思う。
糖はデンプン、あるいはセルロースに変化しうる。このセルロースは穂では形成されず、常に植物全体で形成されている。そして、セルロースの形になるのでははく、植物の形になる。つまり、植物の構成素材である。人間にはまったく消化できないが、草食動物は消化できる。
08 : 大量に食べてはいるが、栄養にはなっていない素材である。

タンパク質

01 : 卵を割り、黄身と白身に分ける。粘り気やどろどろした感じを伝える。
02 : 卵白を水中に入れる。→水中に広がり、かなり溶ける。
湯に入れる→凝固
酸に入れる→凝固、さらに塩基によって溶解(加熱が必要)。
03 : 実験を系統的に完結させる(熱との関係)。つまり、直火にかける。
燃えず、黒く炭化する。かさぶた状になり、髪、羊毛、爪を焼いたときと同じ匂いがする。
これらは基本的に、硬化したタンパク質(変性したタンパク質)である。
04 : タンパク質自身には形はなく、これまでの実験で分かるように、微妙なバランスの上に成り立つ物質素材である。
本来の意味で、命の担い手である。
爪などのように、固まると死んだ形(変形しない形)をとる。
05 : 牛乳を酸で凝固させる。Sauer Milch(酸っぱい牛乳)の作り方を説明できる。(日本だと、乳酸を入れてヨーグルト?)
06 : アルコールによって凝固することを示す。アルコールが保存料でありうることを示す。

脂肪と油

01 : 脂肪を水に浮かす。沈めても浮いてくる。また、水の上を転がるだけ。
油を水の上にピペットで吹き付ける。黄金色の小球が揺らぎ、やがて水面で落ち着く。
水中で吹き出すと、油の放線が見られるが、これも水面で安定する。
油に水を入れると、沈んでいく粒が見られる。
試験管に水と少量の油を入れ、よく攪拌する。すると、ミルクのように白濁するが、やがて元に戻る。
同じことを、石けん液を加えて行う。油滴がずっと細かくなり、元に戻るのに時間がかかるようになる。
02 : 濃い石けん液、あるいは洗剤液を用いて同じ実験を行う。
これによって油は油滴にならず、水中に粒になって止まる。
油汚れは水では洗い落としにくい。この実験で石けんの役割が明確になる。
03 : 脂肪の融解と凝固
04 : 鉄製のるつぼに脂肪を入れて加熱する。すぐに火がつくことはないが、十分に加熱するとススを伴う明るい炎が出る。
灯油を沸点まで加熱すると劇的な変化が見られる。
容器から油をこぼしても、容器の壁面に油がついている限り、燃え続ける。
燃えている油に水を吹き付けると、火勢が増す。水を一杯(コップ?)かけると火勢はさらに強まり、数メートルの炎が上がる。同じ現象が天ぷらなどで起こりうることを警告できる。
05 : るつぼに水と油を入れて加熱すると、反応はよりマイルドである。その炎でシャーレにバターを入れた中でジャガイモを焼いたり、試験管を加熱したりできる。じりじり言いながら焦げていくのを観察できる。この音は、バターやマーガリンにかなりの量の水が含まれていることを示している。
06 : 油が《火》の要素と関係が深いことがわかり、《水》とはかかわりが少ない。
油を食べ過ぎると、消化が悪く、胃が重くなるが、バターではそうはならない。
07 : 体内に入った脂肪は発熱用として重要である。それゆえ、寒冷時や重労働の際には脂肪分が必要。
また、身体の隙間を埋める物質であり、動く上では潤滑油の働きをしている。
08 : 水鳥などの動物では防水にも使われる。また、鯨、アザラシでは脂肪が保温層になっている。
09 : 植物では、脂肪は種子に含まれることが多い。これは熱プロセスに関係している。

牛乳

01 : このエポックは牛乳で締めくくるとつながりが良い。
動物も人間も赤ちゃんのときは乳だけで成長する。つまり、必要な栄養はすべてその中に含まれている。
02 : 牛乳に糖が含まれることは、フェーリング溶液で証明できる。この糖はもちろん栄養分である。しかし、ヨーグルトができるにあたっては、この糖が重要な役割を果たしている。酸っぱくなると、甘みは消える。(フェーリングでも反応が少なくなるはず。)
【注】ヨーグルトの乳酸菌とは、乳中の糖分をつかって発酵をし、その際にできる乳酸が酸としてタンパク質を凝固させる。それゆえ、生ヨーグルトでは砂糖が別な袋に入っている。初めから入っていると、時間と共に甘くなくなってしまう。
03 : ミルクを放置すると、脂肪層(クリーム)が分離する。それを遠心分離器で加速することもできる。(調整乳では難しいかもしれない)
04 : Milk、あるいはクリームからバターを作る。
激しく振るか攪拌することでバターの粒ができる。
クリームの主成分は脂肪であるが、ミルク内の他の成分も含む。
それに対し、バターの主成分は脂肪と水である。一見すると水は薄める作用しかないように思うが、実はバターにとって重要な成分である。
バターには消化を助ける成分が含まれ、マーガリン会社が研究をしている。(とっくに成果がでているはず?)
ミルクとバターを比較すると、ミルクでは水の中に油が混ざり、バターでは油の中に水が混ざっている。
05 : タンパク質はさまざまな方法で見つけることができる。
ミルクを加熱すると表面に膜ができるが、それはタンパク質の一部である。
酸を加えるとすべてのタンパク質を凝固させることができる。
自然に酸っぱくなった場合にも同様な凝固が起きている(Sauer Milch)。
やや密な沈殿部分とやや透明な液体の乳清部分とに分離する。
分離に関しては、温度が低いと明確には現れないが、加熱するとよりはっきりとする。
ミルクのzusammenlaufenという現象。(日本では有名ではない現象でしょう)。
06 : Sauer Milchをさらに布で漉して濃くするとQuark(日本では見かけない乳製品)になる。
さらに濃くするには絞る。
07 : チーズの製法。
仔牛の胃液で凝固させ、ほとんどの水分を取り除いていく。
08 : これらのプロセスでは発酵を使っている。発酵とは、方向性を持った、ごく初期だけの《腐敗》である。
09 : この授業の後に、動物性食品と植物性食品のリストを作ることができる。
10 : Steinerは化学が産業の基礎であることを、授業内容として非常に大切にした。それゆえ、食品工業について扱うこともできる。あるいは、石けんの製造について教えてもよい。

2015年5月1日金曜日

地球から金星を見た視線が残ったとすると

金星の軌道

地球から金星を見た視線が残ったとすると






地球を中心として見た金星の軌道

金星の軌道

地球を中心として見た金星の軌道