2016年2月2日火曜日

『農業講座』第4講関連事項の解説


目次

  • 堆肥づくりのまとめ
  • 悪臭、良香の考え方
  • ピート(ミズゴケ)
  • 牛角(調合剤500番関連)
  • 枝角(調合剤500番関連)
  • 雄牛の角(調合剤500番関連)
  • 口蹄疫(調合剤500番関連)
  • 牛糞(調合剤500番関連)
  • 調合剤501番(石英粉末と牛鞘角)
  • ケイ酸成分を含む種々の素材の比較

●堆肥づくりのまとめ


  • 《地》的なものは、地下よりも地上部でより生き生きするので地表より高いところで堆肥にする
  • .植物は周囲のエーテル力を取り込んでいる。したがって、農業には大地の持つエーテル力が重要である。

という二点である。
第1講、第2講でシュタイナーは《地水風火》について、どれが地上部と地下部のどちらでより生きていて、どちらでより死んでいるかを述べている。それによると《地》は地下では死に、地上部では命を持つと言っているし、それを前提にすると堆肥を通常の地表より高い部分で作るのは理にかなっている。

●悪臭、良香の考え方

シュタイナーは、生命力に満ちたものは内側に悪臭を秘めている、と述べている。これで思い浮かぶのは、人間や動物の腸ではないだろうか?腸が内部に悪臭をため込んでいることは明らかである。また、下痢をするとやや後に身体パワーの低下を感じる。したがって、腸が私たちのエーテル的な力の源であると考えても不思議ではない。
ここで生命力がなぜ悪臭なのかを考察してみよう。基本は、エーテル的なものとアストラル的なものの関係である。エーテル体は生命力の源であるし、アストラル体は意識の基盤であり、知覚をつかさどっている。しかし、この両者はある意味で敵対的な関係にある。つまり、意識(アストラル)は生命力(エーテル)を食いつぶすことで成り立っている。ロウソクの炎が蝋を食いつぶすことで輝くようにである。それゆえ人は、16~18時間、目覚めているとエーテル体がある程度食いつぶされ、意識を保つことができなくなる。そして、意識を失った睡眠時に再び生命力を回復するのである。また、生命的活動が活発になると、たとえば満腹時、妊娠・授乳期、感冒罹病期、骨折回復期、等々では、非常に眠くなり、意識を保つのが難しくなる。つまり、エーテル的活動が優位になると、アストラル的活動(意識)は退くのである。
また、アストラル体の主要な働きは《知覚》である。これを前提に考えると、知覚(アストラル的なもの)にエーテル的なものが近づくと、それは知覚にとって敵対的、つまり不快なものである必要がある。それゆえエーテル的働きが活発な堆肥づくりでは《悪臭》を放つのである。
逆に、アストラル的なものがエーテル的なものの中に侵入してくるとどうなるだろうか。これが人間生体で生じると、それは痛みになる。なぜなら、知覚的なものがより強く肉体に入り込んでくるからである。また、これが植物で生じると、毒草になるという。そしてシュタイナーは痛みに対しては毒草が有効であると述べている。つまり、アストラルがエーテルへの深く侵入しすぎている状態が人間と植物で感応している。
しかし、アストラルとエーテルの関係はこれだけではない。アストラル的なものがエーテル的なものをコントロールし、たとえば動物や人間の身体を適切なフォルムにつくり上げる。植物では、アストラル体は内には持っていないものの、外からのアストラル的刺激によって、成長の仕方を変える。たとえば、葉が繁茂する時機と花が咲く時機ではアストラル的働きかけが異なる。

まとめ

  • エーテルとアストラルは互いを排除する部分がある
  • 命に関係するエーテルにとってアストラルの進入は痛みであり、植物では毒
  • 知覚に関係するアストラルにとってエーテルは不快(悪臭)なもの


●ピート(ミズゴケ)

積んだ堆肥内部にある生命力を逃がさないために、シュタイナーはピートで覆うことを推奨している。
ピートの主要な素材であるミズゴケをゲーテ的に考察すると理解できるので、その概略を紹介する。
ミズゴケは主に高層湿原に生育する。ちなみに、《高層湿原》とは「標高の高いところにある湿原」ではなく、湖底から堆積したミズゴケなど層になり、湖がしだいに浅くなり、やがてはミズゴケが湖面よりも高く(高層化)なった状態を指す。この場合、ミズゴケは何百年、何千年も腐らず、わずかな変化を受けるだけで保存されている。であるから、高層湿原でピートになったミズゴケは《保存力》を持つ。シュタイナーはその保存力をこの堆肥作りで利用している。
後になって、ハウシュカ博士らはこのミズゴケピートから、外からの攻撃から生体を守る薬を開発した。その薬は、物理的な傷だけでなく、心理的なストレスなどに対しても、そこから生体を守る効果があると分かっている(Solum Oilなど)。

ここまでのシュタイナーのアドヴァイスをマニュアル的にまとめると、

  • 肥料には堆肥がよい
  • エーテル的力を逃がさないために、積んだ堆肥をミズゴケで覆う
  • エーテル的力が強すぎる場合には石灰を用いる

となるだろう。

●牛角(調合剤500番関連)

まず、牛の角は皮膚が変形(硬化、強化)されたもので、「強められた皮膚」と考えることができる。そして、皮膚についてシュタイナーは『秘されたる人体生理』の第5講で、「内部の力がそこで終わる地点」と特徴づけている。農業講座では、鞘角についてその作用がさらに強まっていることを表現している。「鞘角においては、内側の諸力が外に漏れず、内側に跳ね返される」のである。
ウシの角とシカの枝角については Ch04 ウシの角 を参照されたい。

●枝角(調合剤500番関連)

鹿の枝角とウシの鞘角では、頭部からの硬い突起という共通点はあるにしろまったく違っている。
雄鹿の枝角は、毎年、2月頃から伸び始め、7月頃まで成長する。その成長の間は、袋角と呼ばれる皮膚に包まれているが、成長が終わると剥がれ落ちる。その際には、まだ少量の血液が残っているために、枝角が血で真っ赤に染まっている。そして、最後に残るのが骨から成る枝角である。その枝角も、特に切らなくても1月には自然に落ちてしまう。

しかし、この鹿の枝角が成長する様子はしっかりとイメージしてみてほしい。雄の鹿は体重はほぼ人間の男性並の50kgから130kgだと言う。そこから、半年間で立派な枝角が成長する。これは内から外へのもの凄い生命力ではないだろうか?そして、夏にはその骨、つまり身体中心部の芯と同じ素材のものが、死んだものとして外に剥きだしになる。内にあったものが外に出て来るし、その形は外に向けて広がっている。そして、最終的には外の世界に吸収されてしまう。このしぐさの中に、「内側のものすごい生命力が外に流れ、そこで死へのプロセスをたどり、外の世界とつながろうとしている」動きを見て取れないだろうか。

●雄牛の角(調合剤500番関連)

講演に続く質疑応答の中でシュタイナーは調合剤用には「雌牛の鞘角に限る」と言っている。雄牛の鞘角ではいけない理由を考えてみよう。

これは体内での代謝活動を考えればわかる。


雌牛の搾乳量は、多いもので1日20l、年間では7トンにも達する。それに伴い雌牛は1日に100lの水を飲み、1lの牛乳を作るためには、300l~500lの血流が必要だと言われている。つまり、牛乳1日分に約6~10トンの血流が必要である。これだけの力を内に止めておくための装置が雌牛の鞘角であり、蹄である。それに対し、雄牛の内部代謝はどれくらいであろうか。草食動物としては、特に繁殖期ではやや攻撃的な性格を示す。これは力すべてが内側の代謝に向けられているとは言えず、外に向かっていることを示している。

●口蹄疫(調合剤500番関連)

口蹄疫は、主に偶蹄目の動物が感染する病気で、2010年には宮崎県で被害が広がり、問題になった。現在ではその原因はウィルス感染とされている。基本的症状は、動物の元気がなくなり、牛だと搾乳量が極端に減るのだそうである。また、蹄付近に水疱ができ、蹄の温度もとても高くなるという。

さて、偶蹄目に属する動物を挙げると、牛、羊、豚、山羊、鹿、キリンなどである。そして、これらの動物の特徴を一言で言ってしまえば、「信じられないくらい旺盛な生命力」である。乳牛ではそれがミルクという形で現れるし、羊では羊毛、豚では肉や脂肪、雄シカでは枝角、雌シカでは毎年の出産といった形をとる。つまり全体に、内部で活発に活動し、内部の力を何かにため込む傾向がある。そして口蹄疫では蹄が弱ってくることと、元気がなくなることが、同時に症状として現れる。つまり、内側の力を堰き止めている蹄が弱り、そこでの活動が活発になり(蹄が高温)、内部の活性が弱まることが相互に関係している。この病態をシュタイナーは「本来、内部で働くべき諸力が弱った蹄から外に流出している」とみるのである。

  • 牛の鞘角には、「内なる諸力を内に保つ」という本質があるとわかる。

●牛糞(調合剤500番関連)

牛糞は大量で、黒くぬかるみくらいのドロドロである。放牧された牛の体内で起こることをイメージしてみよう。草原に生えるさまざまな草が、それらが持つ生命力と共に、まさにその草原の配合でミックスされ、取り込まれる。これはまず約200lの大きさのルーメンと呼ばれる胃に入る。ここでは消化液は出ないが、多くの微生物が共生していて、植物を分解している。この作用は、大地に落ちた葉が腐葉土になっていく際に受ける作用と非常に似ていると言えるだろう。そして、消化管全体では大量の水分(消化液1日100l)でホメオパシー的にポテンタイズされている。さらには、牛の体内を50mの腸を含め通ってきているから、そこで動物的作用、つまりアストラル的作用も受けて糞になって出てくることになる。

草食動物でも、ヤギやウサギの糞は、大豆大の粒でポロポロとかなり乾燥した感じである。馬の糞は、大福大でやはりポロポロした感じである。多種の植物を食べ、そこに水的なものと共にエーテル的なものを残し、しかも動物内の長い管を通ってきた糞、という点で考えると、牛の糞がいかに特別かが理解できると思う。

このように内側にエーテル的、アストラル的な力に満ちた牛糞を、外に力を逃がさないカプセル、つまり牛角に詰め、大地の活動が豊かな冬の間、50cm~75cmの深さに埋める。するとそこに、エーテル的・アストラル的諸力が凝縮されることになる。冬には大地の持つ力が最も活性化していて、さらには結晶化の力も最も強く、いわば大地全体が「内に向けて」作用している。
牛糞に蓄えられた力が、周囲の大地の力も引きつけ、力を堰き止める牛鞘角で覆われているために、すべてがそこに集約される。

さて、牛糞の元は植物であり、腐植土と似た性質を持つと思われる。これを宇宙的諸力と地上的諸力という観点で見れば、牛糞は地上的な力との親和性が高いはずである。そして、宇宙的諸力はケイ酸が受け取るので、この500番(牛角糞)プレパラートを地中に埋める際には、宇宙的諸力が強すぎないことが望ましい。こう考えると、地中に埋めるにあたってシュタイナーが「土壌が粘土質すぎたり砂地でありすぎたりしない場合には」と言った意味が理解できる。つまり、「地中に宇宙的な力ばかりではない状態」が望ましいのである。

こうして作られた調合剤は、《水》要素、《土》要素にしっかりと馴染まされる。水と混ぜる際にもシュタイナーが「水と根本的に結びつける必要がある」と表現しているのが印象的でした。

●調合剤501番(石英粉末と牛鞘角)

501番は、石英、長石などを粉砕して作る。このことから、成分としてはケイ酸が重要である。宇宙的なものと親和性を持つ素材である。これを固体から粉砕して粉末にし、水を加えて粥状にする。このプロセスは固体=《地》から粥状=《地+水》への変化と捉えることができる。
そして、この粥状のものを牛角に詰め、夏の間地中に埋める。つまり、大地の力が外に向かって出ていく時期に地中に置くのである。これによって、《拡散的力》が集約されると考えることができるだろう。
地中から取り出した501番も水と一体化させる。さらにシュタイナーは散布方法にも「霧のように」と指示している。霧というのは《水》と《風》の複合体と考えることができる。つまり、501番が作られるプロセスでは、《地》から《地+水》、さらに《水》、そして《水+風》としだいに軽くなる方向、つまり拡散的方向が重要な意味を持つ。

●ケイ酸成分を含む種々の素材の比較

ここで、ケイ酸を成分とする、岩、石、砂、粘土、501番調合剤を比較してみよう。

  • 岩や石:シュタイナーは宇宙的な力を引きつけると述べている。
  • 砂:粒が粗く、《地》的なケイ酸と見ることができる。砂によって宇宙的諸力を地下に保つことができ、地下部を食べるジャガイモの栽培などに適している。
  • 粘土:宇宙的な力を地上部に導く作用を持つ。それゆえ、地上部を食べる農作物によい作用がある。ちなみに、粘土とはケイ酸質の微粉末に水が加わったものである。それゆえ、粘土を整形し、風乾燥させ、さらに高温で焼くとガラス質(ケイ酸)の瀬戸物になる。言い換えると粘土とは《ケイ酸》+《水》エレメントであり、これが宇宙的な力を地下から上に導く。
  • 501番:これは《ケイ酸》+《水》+《風》エレメントであり、それゆえ宇宙的な力をさらに上方に引っ張り上げる。それゆえ、特に種子を作る作物で有効であるとシュタイナーは言っている。

ケイ酸(宇宙的諸力の伝達体)を地水風火の視点で整理したのは森章吾のオリジナルであるが、シュタイナーが元々言っていたことを違うつながりで整理しただけである。これによってシュタイナーの思考法が若干でも理解できるようになると思うし、そこでは《地水風火》が重要な位置を占めることも理解できるはずである。

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